固定(anchorage)の強さ

歯科矯正学

固定の強さとは?

・小臼歯抜歯の症例においては、犬歯および前歯を後退させるときに2級ゴムやクロージングループ、パワーチェーン、クローズコイルスプリングなどを使用するが、固定源としての大臼歯が近心移動する可能性がある

・抜歯スペース閉鎖においては、567 vs 123(第一小臼歯抜歯の場合)、67 vs 1234(第二小臼歯抜歯の場合)の綱引きが起こるため、固定源としての567あるいは67がどの程度近心傾斜してもよいかによって分類されたのが固定の強さの分類である

・治療のゴール設定により大臼歯の配列位置は変化するため、個々の患者のゴール設定に合わせて大臼歯の固定源にはどの固定の強さを求めるのかを考える

固定の強さのイメージ図
(第103回歯科医師国家試験 A-46より引用改編)

固定の強さの分類

最大の固定(Maximum anchorage)

・臼歯の近心移動量が抜歯スペースの1/4以上は許容されない固定源の考え方を最大の固定という

・小臼歯の歯冠幅径が約8mmと考えると、約2mmまでの近心移動しか許容されない場合の固定源の考え方

・固定の喪失(anchorage loss)を起こさないようにTADs(temporary anchorage device system)やSMAP(super mini anchor plate)、あるいは顎間ゴムの使用など術者が固定源をどこにどの程度求めるのか考えながら治療を行う必要がある

中等度の固定(Moderate anchorage)

・抜歯スペースの1/4〜1/2の範囲で臼歯が近心移動することが許容される固定源の考え方を中等度の固定という

・小臼歯の歯冠幅径が約8mmと考えると、約4mmまで近心移動して良い場合の固定源の考え方

・予測模型(セットアップ模型)などにより中等度の固定と診断された場合であっても、大臼歯の近心傾斜防止のために加強固定(上顎はTADs、下顎はリップバンパーやtip back bendなど)を用いながら注意して治療を進める必要がある

最小の固定(Minimum anchorage)

・抜歯スペースの1/2以上またはそれ以上臼歯が近心移動することが許容される固定源の考え方を最小の固定という

・小臼歯の歯冠幅径が約8mmと考えると、約4〜8mm近心移動して良い場合の固定源の考え方

・大臼歯の近心移動が必要なため、加強固定は通常用いない

歯科矯正学
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